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※写真はネットの著作権フリー画像から選んだもので、木ノ下葉子さんとは一切関係ありません。


 作者は、
2013年水甕新人賞、2017年水甕賞を受賞。本歌集は、2018711日発行の第一歌集、初版1000部の商業出版である。彼女の歌は、芸術を追求するための歌でも、読者を喜ばせようとする歌でもなく、自身が生きてゆくための歌である。

 

 父は茂、妹は梢、風はいつも固有名詞の彼方から吹く

 翳す手の小指が水平線を掻く私は夏の朝に生まれた

 

 1首目は本歌集の冒頭歌、2首目は水甕新人賞受賞作の冒頭歌である。これらの歌を冒頭に置くことに、作者の覚悟を見る。
 上手いのだけれど、その時代その年代の誰が歌ってもよさそうな歌がある。また歌を詠むときに、己をさらけ出すことに躊躇い、己を隠しながら見せる、というような中途半端な歌になってしまうことがある。
 この歌集に収められた歌は、歌人、木ノ下葉子だけの歌であり、ここにその真実を表すという静かなる宣言を見る。

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 (水甕岡崎支社 木村美和)