429日、神戸短歌祭(兵庫県歌人クラブ主催)が県民会館パルテホールで開催され、高橋睦郎氏の講演が行われました。演題は「『うたふ』ということ」。高橋氏にとって「うたふ」とはどういうことか、興味深い話を聞くことができました。以下、簡単にまとめてみました。
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〈うたふ〉
「うたふ」の語源は「訴ふ」だといわれている。他者に向かって思いを訴えること。その究極の他者は恋人であり、最終的には神だろうと思われる。

〈こひ〉
「恋」、動詞ならば「恋ふ」。「恋ふ」の核心は「こ」であり、カ行変格活用の「く」の命令形の「こ」 で、こっちに来い、来てほしいと相手に言うこと。言葉は本来相手に対して発するもので、それは命令や懇願であことから、動詞のもとは命令形だと考えられる。

そこから発生した「恋」こそが詩歌の基本である。

 

〈ダイアローグ〉
歌は本来呼びかけるもの、ダイアローグである。しかし最近の歌はモノローグがほとんど。詩人のTS・エリオットは、本当の詩である証拠は〈500年前の人がそこにいて対話ができると感じられること〉という。

まなぶ〉

昔は歌を学ぶ場があった。国学は歌学であり現在も結社はあるが、現代は歌人のひとりひとりが学ぶ場であり、過去未来同時代とのダイアローグを目指すときに来ている。

ダイアローグは声に出してのダイアローグでありたい。声に出すことは呼びかけること、呼びかける対象が不明でも声に出せば必ず誰かに届く!



                              (加藤直美)