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田村昌子『せんにちこう』より

二段目の抽斗押せば三段目ふわりふくらむ母の桐箪笥

ほったりと菜の花の闇に包まれて真昼の猫を見失いたり

牛乳を三百年間そそぎいるフェルメールのふくよかな女(ひと)

幼児が抓んで切れたきん色の蜥蜴の尻尾バケツに撥ねる

小手毬のふさやかに揺るる日面に夫の白髪切り揃えおり

(木村美和)