1番好きなのは、2つ目の作品です。

「とうふの人」

六月のある日
とうふの上で
寝ころんでいる人を見た
思わず
 気持ちよさそうですね と
声をかけると
 ちめたくて
 ちもきいいです
不思議な
答えが返ってきた

(中略)

くつを脱ぎ
そっと寝ころんでみた
 ああ
 ちめたくて
 ちもきいいな と
思うやいなや
ぬむぬむ
身体が沈み始めた
困ったといえば
なるほど困ったことだが

(後略)

このあとどうなるでしょう?ご興味のある方は、どうぞ詩集を読んでみてください。
豆腐の上に寝ころぶだなんて、発想だけで面白いですね。
これほどまでにあり得なさそうな設定が、なんとも自然に感じられるのは、
じめじめと暑くなり初めて、豆腐の気持ちよさに触れたくなりそうな「六月のある日」であったり、日本人なら誰でも(?)その気持ちよさを知っている「豆腐」であったり、「くつを脱ぎ」のこれまた日本人に馴染み深い、それもこの場面でやや間の抜けた感のある礼儀正しい作者像であったり、「ぬむぬむ」の絶妙さであったり……。
そして、言葉遣い!

  ちめたくて
  ちもきいいです

なんでしょう。この気味の悪さは。
豆腐の上だからと言って、小さな人でもなさそうです。つぎの日には、そこに大人である作者も寝ころぶのですから。年齢不詳。性別も……あるのかな。
不思議な、人ではないような人の、そう、まさに豆腐の上に寝ころぶような不思議な人にぴったりの言葉遣いです。
それらに不思議と説得されてしまうのでした。