友人が、お薦めの詩集を貸してくれました。
空間が良いのだとか。
帯には、

  それからは
  僕が歩くたびに
  ころころ
  音がするようになった

   奈良ののほほん詩人、西尾勝彦の詩集

と書いてあります。
イラストは、「食器と食パンとペン わたしの好きな短歌』でおなじみの安福望さん。

詩集をあまり読んだことがないので、軽い感想と、
いいな~、と思った詩を少し紹介することにします。
ただ、詩とは、どこまで引用が許されているものなのか、、よく分からないので、
中途半端に、ほんとうに少しだけ。

「半笑い」
僕は
日々
貧しい農夫のように
過ごしています
そして
いつも
しずかに
半笑いなので
よほどの人しか
近寄ってきません
(中略)
僕もお返しをしようと
ごそごそしますが
何も見つかりません
しかたがないので 
 ごめんなさいね と
真顔で言って
また
半笑いに戻ります

冒頭の詩です。最後に一瞬真顔になり、また半笑いに戻るところが好きです。
作者は半笑いをしている自覚があり、自分のことを客観的に、それも随分と的確に捉えています。
意図的に半笑いをしているのかもしれません。そうだとすると、やや小賢しさも感じられます。
そうでなければ、ある頃までは、半分ではなく全面に笑い顔を見せているつもりだったのかもしれません。楽しそうな、幸せそうな、決して傷ついていないような顔をしているつもりだったのかもしれません。
いずれにせよ、半笑いはいつしか作者の顔となり、外の風を受けながら、作者の心を大切に守っているように思いました。

                           (木村美和)