水媒花

みんなで綴る短歌ブログ。

このブログで、共に短歌を学び、短歌で遊べたら幸せです。
宜しくお願いします。

《このブログでやりたいこと》
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2018年10月

誰かから誰かへわたる一隻の船を見ている半島の朝
ぺちぺちと尻を叩いて助手席へ促す草食みやまぬわたしを
海沿いのカーブはゆるくいまなにか大事なことを思い出したが  
『幻桃』2018年9月号
(幻桃 江口美由紀)

  わが意思にかかはりもなき樹々の群みどりを重ね日々に明るむ   萱野博道

樹々の明るさ、力強さと内面のかげりの対比がさらりと詠まれていて惹かれる。

  木のベンチ取り外されて一人ずつの椅子が列びぬ駅のホームに   諸井敦子

読者がそれぞれに持っている木のベンチをめぐる思い出を、なつかしく感じさせてくれる。
 
  巌の穴に頭(づ)をさしこめば臭ひたつ二〇〇〇年余を培かふ黴か   太田美千子

思わず顔をしかめてしまうような臭いや湿気をリアルに感じる。

他にも気になった歌をいくつか引いてみる。
  くさめひとつひとりの部屋に吸ひこまれ夜の静寂のさらに深まる   藤田正代
  さうなのと聞かれて困るさうならばさうなんでせうさうしときませう   篠田理恵
  故郷の図書館南向きのテラス今もふたりの空気ふくらむ   豊増美晴
                                 (幻桃 江口美由紀)


かさなりてうち重なりて大空に花火は重き音をともなふ 三崎澪

角川『短歌』2018年10月号、「花火」より。花火を視覚ではなく聴覚で捉えている。しかもその音は「重い」という。腹の底に響くような大きな音なのだろう。
<かさなりて>、そして<うち重なりて>と続ける言葉のリズムが、なるべく切れることなく打ち上げられ続ける花火の様子をしっかり示している。ひらがなと漢字の使い分けも参考にしたい。

二尺玉三尺玉のひろがれば遠のくものの音のさびしさ

花火が拡大して消滅することを<遠のく>と見た。七首で構成された連作だが、花火をテーマにしているのに、どこか寂しげなのが印象的であった。

(水甕 重吉知美)



 

このエッセイは、主に水甕社の会員に向けて書いています。

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私には子どもがいない。だからと言って別に子ども嫌いではないので、子どもの話は振ってくれても構わない。
しかし、子どもの話は、相手の話の進め方によってはこっちがキレたこともあった。そうなった時の話の進み方には、決まった規則があることに気づいた。今回はその話に付き合ってもらう。

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事例:
「お子さんは?」
「いません」
「作らないの?」
「できなかったので」
「あらー、治療すればいいじゃないの」

「◯す!!!!!!(# ゜Д゜)」
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お分かりだろうか。実は「作らないの?」の時点で◯意が既にマックスに達していたのである。

お子さんやお孫さんのいる人に問おう。子どもってどうやって生まれたっけ?

誤魔化すな!何がコウノトリだ!キャベツも関係ねえ!!!

そうです、子どもを授かるには大抵の場合、セックスが必要です。つまり面と向かって「子どもを作りなさいよ」というのは意外にはしたないことなのです。
それから子どもができないことをカミングアウトさせられるのは、結構辛い。自分の体に問題がある、あるいはあるかもしれないという話題は、かなりセンシティブなはずだ。そういうのを言わせるんじゃない。
さらに「不妊治療すればいい」と言われるのは、本当にきっつい。ガン患者に治療方針について口出しすることと同じぐらい無礼だ、と言えばいいだろうか。

私の経験上、この「不妊治療の成功者」というのが厄介だった。自分たちが成功したので「あなたも治療すれば子を授かる」「治療にも踏み切らないなんて努力が足りない」とやかましいことこの上ないのである。だいたい治療費だって安くないんだろ、出してくれんのかよ。私に足りなかったのは努力以前の金だ!バカ!!

……はっ!!( ゚д゚) 話を戻さなくては。

子どものいない人などが、一人の子どもを大事にしている人に「二人目は?」と訊くのも当然いけない。セックスなどの身体やプライバシーの領域に触れるだからだ。「一人目のお子さんを作った時はどんなセックスをしたんですか?」と訊くのと同じくらい失礼である。
さらにここでも「じゃあ二人目の養育にかかるお金をおまえが出してくれるのか」という、「金を出さないくせに口は出す」問題が同時に発生する。だから黙ってろ。

ここまで辛抱強く読んだ人は、子どもを作らないと決めているカップルにも「子どもは?」と訊いてはいけないのが分かるだろう。二人はそういうセックスをしないと決めているのだし、望まない子どもが生まれた後のリスクやコストを代わりに担うのでなければ、口を出してはいけないのである。

(水甕 重吉知美)

危険極まりない街といふ通信用基地はまつさきに攻撃される 外塚喬

加藤直美さんが沖縄旅行という。沖縄:水媒花
きれいな海と基地の町、それが初日の印象だった。  
こういう感想が真っ先に出てくるあたりは、社会派に関心のある彼女らしい。

日本の領土で米軍基地を一番広く抱えているのは沖縄だが、本土にも多くの米軍基地がある。私の住む西多摩地域には、福生市中心に複数の自治体の土地を米空軍の横田基地が占めている。
今年に入ってからオスプレイが飛ぶようになった。横田基地では毎年「日米友好祭」を開き、一般人に基地の一部を公開するのだが、今年の友好祭ではオスプレイを堂々と展示していてその厚かましさに萎えた。

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(写真は横田基地の塀。写真素材 足成より。撮影者、いしだひでオ氏。)


掲出歌は角川『短歌』2018年10月号、外塚喬「敗戦国は日本」から。米軍所沢通信基地にも7月にオスプレイが確認された。その時の恐怖を詠んでいる。

所沢市民を恐怖のどん底におちいらせオスプレイの飛び立つ 同

連作の最後の一首。下句が<オスプレイ>のところで句またがりになっている。平易な言葉だけを使用した上に、ちょっと読みにくい句またがりなので、最初の一読では舌足らずの幼稚な印象を持つかもしれない。しかし、この句またがりが言いようのない不安をザワザワと掻き立て、読後感に影響を与える。

(水甕 重吉知美)

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