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それぞれが「わたしはシャルリー」と言へる日の遠きを思ふ霜柱踏む

   春日いづみ歌集『塩の行進』が刊行された。
掲出歌の「わたしはシャルリー」は、2015年フランスの新聞「シャルリー・エブド」で12人が死亡したテロ事件のあと、表現の自由を支持する人々によって掲げられたスローガンである。シャルリー社の記事はイスラム教徒に対してかなり差別的な内容であったが、それに賛同するスローガンではない。もちろん表現の自由とヘイト発言は別であるが、発言内容の如何にかかわらず表現の自由は守られるべきであり、今まさにサウジアラビア人記者がトルコのサウジ総領事館で死亡した事件の真相を、世界中が注目している。
 話が逸れてしまったが、春日いづみは長年映画作品のシナリオ採録の仕事に携わっていたこともあり、高い見識をもった社会派の歌人である。

  「ネット銀行レモン支店」にタッチする葉つぱのお金を送る心地に
  凍結の卵子精子は何色ぞ冷凍庫より取り出すイクラ
  エルサレムに求めし木の実のロザリオの渦巻きてをり抽斗の隅
  たはやすくガンジーの手に拾はれしひたに輝く塩を思へり


 独自の視線で社会を切り取り、声高に主張するのではなく、詩として表現された歌が魅力的である。  (水甕芦屋支社 加藤直美)