このブログの主催による第一回目のネット歌会を行ないました。
いくつか気づいたことを記してみます。 

第1回水媒花歌会のお知らせ



☆ スケジュール

6/19(火)~ 6/23(土) 参加者募集期間
6/24(日)参加希望者全員に掲示板のURLとパスワードをBccでメール送信
6/24(日)~ 6/30(土) 掲示板に無記名で出詠
7/1(日)~ 7/2(月) 投票
7/3(火)~ 7/7(土) 批評・意見交換
7/8(日)~ 7/9(月) 作者による名乗り
7/11(水)掲示板を削除して閉会

☆ 参加者
江口美由紀さん(幻桃)、加藤直美さん、岸本瞳さん、木村美和さん、郷田淳さん、柴田香さん、藤本潮子さん、重吉知美(以上、水甕社)と、他3名の合計11名でした。
水甕社の有志で始めたブログ、歌会ですが、ブログメンバーとしていい記事を書いてくださる江口さんや他の結社・グループの方も参加してくださって、小躍りしました。

☆ 掲示板の利用と作品の扱い
歌会は、参加者のみがパスワードを知る掲示板を利用して行います。
ですので、ネット歌会とはいえクローズドな状態になります。
参加者以外に詠草を知り得ないので、未発表の作品を提出して批評を受けることもできます。
このため、他の方の作品を無断で引用しないようにお願いしました。
この記事でも、私以外の作品を引用することはいたしません。

※ 結社・短歌人のFAQページの「歌会に出ていた他の方の作品を自分のブログで紹介したいのですが…。」に対する回答が参考になります。私たちのネット歌会も同じ考えです。

☆ 無記名詠草
それぞれに新規スレッドを立てて、スレッドのタイトル欄に作品一首を書き込む、ということをしました。この時点で名前欄やコメントは入力できないようにしてあります。
このため、歌会を主催した人間(今回は私)にも詠草の作者は不明です。
この方法は、別のネット歌会を参考にしました。

☆ 投票
これと思った詠草のスレッドに、名前を書き込んでもらいました。この時点では名前欄を入力できるようにしてあります。1人1票の持ち点です。
結果、江口美由紀さんの作品が4票を得て1位でした。

☆ 批評
ここからは、名前欄とコメントを書き込めるように設定しました。
後述のようにアクシデントはありましたが、書き込みは続きました。
やはり票を得た歌についてはコメントが多く、それ以外の(この歌は議論が盛り上がるだろうな)と私が睨んだ歌も議論が活発でした。
ネット歌会の利点として、多忙すぎない限り時間を選ばずに発言できる、ということがあります。また、対面の歌会だとうまく発言できないという人にも、じっくり考えて発言できる機会があります。

☆ 書き込みの傾向
書き込みの傾向は大抵次のようになります。
・文法や仮名遣いの正誤、語の選択など、技術的な観点からのコメント。
・感想、解釈。「分からない」というコメントも散見された。
先ほどネット歌会の利点は時間を選ばないことだと書きましたが、書き込みに乗り遅れると言いたいことは先の人にほとんど言われている、ということがあります。大抵は、技術的側面か解釈の点で議論が出揃うので、そういう時は私は感想を書くようにしました。また、自分以外の作品で書き込みがやや少ないスレッドになるべく書くようにしました。

☆ 事例

 獺を滅ぼし輸入する空の6・23は毎年暑い

私の詠草です。この歌に対するコメントは以下のようなものでした。

1.作歌背景の推察、題材に関する解説
  • ニホンカワウソは絶滅し、最近、東南アジアから日本に密輸されるカワウソが摘発されたというニュースがあった。(その通りです!よくぞ調べてくださった)
  • 6月23日は沖縄慰霊の日。カワウソと沖縄、日本人としてやるせない思いを歌ったものと読んだ。
2.語の選択
  • 改作前は「輸入する国」だったような。(詠草提出期間は書き直し可能なのでそのプロセスを見てくれていたらしい)
  • 「国」の方が6・23とつながるのでは。
  • 「空」よりも「国」の方がインパクトかあり、作者の意図も伝わるのでは。
うーん、なるほどと思い、この後は「カワウソ」と「沖縄慰霊の日」の題材を分けて、つまり二首に改作して結社誌の詠草として提出してみました。

☆ 作者の名乗り
自分の立てたスレッド、すなわち自分の歌のスレッドに作者であることを明かして書き込んでもらいました。
その歌の背景の説明も可としました。少人数の歌会だと「こういう動機で詠みたかった」という悩みに対して他の参加者がアドバイスをしてくれることがあります。しかし、人数多めの歌会や制限時間の厳しい歌会だと、そういう相談の機会はまず与えられません。ネット歌会だと、お互いに時間がある時に読んで回答してあげればいいので、多少の長い書き込みは可能です。しかし、作歌背景を書き込んだ人はいたものの、今回はそれで大いに盛り上がるということはありませんでした。

☆ メール告知
掲示板のURL、詠草提出、投票、批評、作者の名乗りなどのタイミングでお知らせのメールを送りました。通常の歌会と違って日数をまたぐので「段階ごとにメールで知らせてくれるのは助かる」というご意見もありました。

☆ アクシデント
大きいアクシデントは、実施期間中に発生した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)です。参加者の多くは関西以西に住んでおり、豪雨の影響で掲示板に思うように書き込めなかった人もいらっしゃったようです。
もう一つはネットにありがちといいますか、書き込みを巡っての行き違いです。ご本人が書き方がよくなかったことに気づいて謝意を示され、私も主催者として念のために介入しました。入力したものを確認してから「書き込む」や「送信」のボタンを押す。ネット活動としての基本でした。私もやらかしてばかりなので、自戒を込めて記しておきます。

☆ 最後に
結論として言いましょう。ネット歌会はいいぞ。
通勤や帰りの電車の中で、休憩の合間に、スマホで掲示板を開くと誰かが書き込みしている。それが自分の歌へのコメントでなくても、ワクワクしたものです。自分以外の誰かの解釈は、聞けば聞くほど面白い。短歌の面白さは、その作品についてみんなでワイワイ言い合えるところにもあるのでしょう。

(水甕社 重吉知美)